暮らしの歳時記 2月(如月)
大根 [ ダイコン ]
 大根の原産地はパレスチナだといわれています。古くから東西の交易と共に世界へと伝えられていきましたが、日本へは10世紀頃の伝来です。以来日本人の食生活には欠かせない野菜として親しまれています。さまざまな品種改良で作り出された大根の中で最も大きなのが桜島大根。長さ1mにもなる守口大根、女性の足にたとえられる練馬大根もあれば聖護院大根もあります。かつては“おおね”“すずしろ”と言って春の七草のひとつにも数えられます。現在は一年中店頭に並ぶ大根ですが、通常秋に撒いて冬に収穫します。あつあつの風呂吹き大根もやはり冬にこそおいしいものです。おでんや刺身のつまにも欠かせない大根は、どんな食べ方をしても食あたりにならないところから、あたらない役者のことを「大根役者」などと言うようです。なかなかどうして、生でも、ちょっと塩をしてのなます、切り干し、漬け物にと味わい深い野菜だと思いますよ。

「すでにして大根の煮え来たり」 久保田万太郎

  夕餉時、通りを歩いているとどこからともなる大根の煮える匂い。郷愁を誘う句です。

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photo by Kinji Fujii