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暮らしの歳時記 2009年 冬


  いよいよ12月。今年も締めくくりの時を迎えました。アメリカでは“チェンジ”を掲げてオバマ大統領が当選し、日本でも民主党政権が出現しました。必殺仕分け人の活躍に期待が寄せられますが、さてどうなるか、じっくりお並み拝見していきましょう。  奈良の行事を見ていくと12月8日、15日に法隆寺と唐招提寺のお身拭いが続き、29日には薬師寺でも行われます。千数百年の間、人々の信仰を集めてきたみ仏たちも清められて新年を迎えられます。
 かつては各家庭でも年末には大掃除が12月の行事でしたが、最近はいつもよりも簡単なお掃除で済ますことが多くなりました。昔のように薪で煮炊きなんてしませんから煤も出ませんものね。それでも部屋を片付け、掃除をすると気持ちがいいものです。
 除夜の鐘を聞いて初詣に行き、七草粥を食べる頃にはお正月気分も抜けて日常が戻ります。若草山焼きは23日土曜日ですがお天気になるでしょうか。この日は大安寺の笹酒まつりですから、昼間は大安寺へ寄ってみるのもいいですね。
 大安寺は奈良時代の大官大寺として壮麗な伽藍を誇っていました。大寺といえば大安寺を指していたそうです。その後東大寺ができたのですが、大寺と区別するために東の大寺と呼ばれ、東大寺となったのです。
 当時、大安寺には唐だけでなく、はるかインドからの仏弟子が集まり、国際的な一大寺院だったようです。東大寺大仏の開眼導師をした菩提遷那もここ大安寺に逗留していました。奈良時代末の天皇、光仁天皇も大安寺にたびたび訪れていたそうです。光仁天皇は天智天皇の孫です。父は志貴親王。「いわ石ばしる垂水の上の 早蕨の 萌え出でる春に なりにけるかも」(万葉集巻8-1418)の歌で知られる知性と情感豊かな親王です。壬申の乱以後、天武帝の時代になってからは、政争に巻き込まれないよう、ひっそり生きたのだと思います。その子が後に光仁天皇となる白壁王。志貴親王は白壁王が8歳の時に亡くなりますから、随分苦労したようです。凡庸を装って大安寺の竹林でお酒を飲んでいたといわれます。なまじ、才覚があると政変を目論んでいると讒言される可能性があったからだといわれます。長屋王のように。
聖武天皇の娘である称徳天皇は独身で子どもが無く、抜擢されたのが光仁天皇。62歳という当時では異例の高齢だったにもかかわらず、第49代天皇として即位します。そして、ここに天武天皇系から天地天皇系へと皇統が続いていくことになるのです。古代最大のクーデターといわれた壬申の乱ですが、結局勝者はどちらだったのでしょうね。
62歳というのは継体天皇(第26代)以降では最高齢です。ちなみに光仁天皇に次いで高齢で即位されたのは125代今上天皇で55歳。竹は漢方薬にもなるほどの成分があるとか。笹酒は、光仁天皇の長寿と幸運にあやかるとともに癌封じとしても効用があるようです。何より、北風の中の熱いお酒、体に沁みますよね、きっと。

冬の魚

暖冬といわれますが、やはり冬は冬。寒い季節に嬉しいのが鍋物ですね。フグのような高級なものから鮟鱇、真鱈、牡蠣など本当においしいものです。そうそう、寒ブリの脂ののったところは刺身で熱燗でしょうか。冬においしくなるのにマグロもありますね。生の本マグロなんて縁がありませんけれど、冷凍だとしてもマグロはおいしいものです。でも、最近は漁獲量が減ったとかで国際的な規制によってさらに漁獲高が減らされるようです。寿司ブームで世界中がマグロを食べるようになったから、という説もあるようですが、どうなのでしょうね。
 近海もので平目や石ガレイなどを薄造りにして、煎り酒でいただくのもいいものです。煎り酒は燗冷ましで梅干を煮詰めて作りますが、これがポン酢とは違った味わいでおいしいのです。晩酌の残り酒をとっておいて作りましょう。
 さて、フグにも負けない美味しさで人気なのが鮟鱇です。西のフグ、東の鮟鱇といわれるようですが、今や全国区。淡白な白身が鍋にぴったりです。それに肝もおいしいですよね。

冬の星座

こがらし途絶えて 冴ゆる空より
地上に降りしく くすしき光よ
ものみな憩える しじまの中に
きらめき揺れつつ 星座はめぐる

ほのぼの明かりて 流るる銀河
オリオン舞い立ち 昴はさざめく
無窮をゆびさす 北斗の針と
きらめき揺れつつ 星座はめぐる

 小学校唱歌にある歌です。かつて、子どもの頃、意味はわからないまま、音楽の時間に歌いました。習った歌はそのまま学校の行き帰りや遊び時間にも歌いましたから、今でもよく覚えています。言葉が難しくて理解できないから歌わないようになったということですが、何とも淋しい気がします。老人施設で働いている人がら聞きましたが、慰安に来てくれた人と一緒に歌える歌が少ないのだそうです。今流行の歌は老人たちが知らないし、昔の歌は今の人が知らないのだそうです。かろうじて、「ふるさと」や「赤とんぼ」が歌える歌かなあ、なんて話していました。性別、年代を超えて歌えるのは素晴らしいことです。
 今年の秋、オリオン流星群が見られました。
一週間程観察できましたから、ご覧になった方も多いことでしょう。星に願いをかけることはできましたか?あのきらめきは何と3000年前の輝きなのだそうです。きらめきは3000年もの時を旅して私たちのところまで届いたのです。 先日、若い星が連なった「連星」の成長する瞬間というのが撮影に成功したと報じられていました。地球から520光年離れた「へびつかい座」のあたりだそうです。主星の南には1600天文単位の腕状の雲が伸び、惑星の材料となるガスや塵を吸い上げているとか。 記事の中で天文単位という単位は初めてしりました。1天文単位は地球と太陽の距離で1.5億キロ。ミリ、ミクロンなど小さな単位にも驚きますが、天文単位にもびっくりしました。そして、素敵な呼び名だと思いました。ロマンチックにさえ感じられます。 これからオリオン座が、冴え冴えと見える季節です。オリオン座にはM42と呼ばれる散光星雲星があり、ここでは新しい星が誕生しているようですよ。冬空を見上げながら、想像もつかない宇宙のこと、想像してみませんか。



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