温暖化で秋の訪れも紅葉も遅れ気味だそうですが、11月ともなれば、さすがに朝夕は随分冷たいものです。街路樹の紅葉も美しく、風もないのにはらはらと落葉し、かさこそ乾いた音を立てるのも晩秋の風情ですね。
紅葉の名所は各地にありますが、奈良公園もそれは見事な風景を見せてくれます。大仏殿の裏では銀杏が黄金色に輝いて、大仏池に映るし、県庁駐車場の東側一角も銀杏と桜の紅葉が織り成す景色は印象的です。少し足を伸ばして春日大社から水谷川を越したあたりなど、夢のような紅葉絵巻が繰り広げられます。
春日奥山の紅葉は三十六歌仙の一人である猿丸太夫が詠んだ「奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きくときぞ秋は悲しき」そのままの風景です。この奥山とは春日奥山ではないようですが、現在鹿の鳴き声が聞ける場所といえば、このあたりということになるでしょうか。存分に装いを凝らした紅葉の重なり、散り敷く落ち葉、遠くから聞こえる鹿の鳴き声など猿丸太夫がどこかで見た情景に立つことができるとは、何とも幸せなことだと思います。
その秀麗な装いも一夜にして脱ぎ捨て、深まる秋から冬へと移るのが11月という月でしょうか。
10月末から開かれる
正倉院展は11月13日で幕を閉じます。
紅葉にもまして奈良を彩る至宝の数々は多くの人々の心を惹き付けます。今年は聖武天皇が楽しまれたという碁盤と撥鏤の碁石も出展しています。工芸の粋を極めた宝物での碁はどんな会話とともに遊ばれたのでしょう。奈良時代の大宮人の暮らしに触れる素晴らしい機会を身近にできるのは奈良に住む特権ともいえそうです。
この正倉院展に合わせて、オリジナルの万華鏡が作られ、ミュージアムショップで手に入れることができます。昨年からの企画ですが、出展される宝物をイメージして作られ、小さな穴からのぞくとなるほど、宝物を彷彿とさせる色合いが煌びやかに千変万化していきます。
縁側で秋の日差しを受けながら好きな音楽を流しつつ万華鏡。心がゆるゆる解けていきそうです。
奈良国立博物館ホームページ
http://www.narahaku.go.jp/