この冬は大変な寒気が日本列島を包み、年末から各地の積雪がニュースとなりました。南国の島だと思っていた屋久島にも初雪が降ったようです。雪国で雪に慣れているはずの人々にも「こんな雪は始めて」と言わせるほどの降りっぷり。
北海道から奈良に憧れて住むようになったという若い友人が「緑葉にだまされる」と言っていました。札幌出身の彼女は「冬は雪景色で木々は枯れ枝が当たり前。奈良では木枯しが吹いているのに木々は緑のままでしょう。緑の葉があるうちはまだ冬ではないという感覚がなかなか抜けずに体調を崩した」と話していました。それを「緑葉にだまされた」と表現したのです。
体では寒さを実感しているのに目はまだ冬ではないと感じさせていたのですね。奈良へ来て最初の冬は12月になってから衣替えをし、何度か風邪を引いたそうです。2年目になってようやく奈良の季節を捉えることができたとのことでした。興味深く聞きました。
深々と足元から這い上がってくるような奈良の寒さ冷たさも彼女には初体験。北海道では外がどんな氷点下でも、だからこそでしょうけれど、室内はどこもぽかぽか。家全体を暖めるから、部屋を出た寒さがこたえるというのです。
そんな奈良の風土だから美味しいお酒が醸され、たおやかな紙が漉かれてきたのでしょう。
冬の冷たい季節は外出が億劫になります。約束がある日など時間が迫ると大げさだけど「えいやっ!」と掛け声かけて温かい室内への未練を断ち切ることに。冬のお洒落はコートを脱ぐ時のことを考えます。自分自身も暖かく、見た目にも暖かそうな方がいいのではないでしょうか。
アクセサリーも何となくを温もりを感じさせるものがあると嬉しいものです。セーターなどカジュアルな装いにこんな木のブローチがひとつあると重宝しそう。木工作家として活躍する窪田謙二さんの手になるブローチは、欅を丁寧に磨いて、漆を塗り重ねられています。木目が浮き上がって、自然の文様を描き、独特の雰囲気を漂わせています。セーターやショールのアクセントに留めると素敵です。材質が木ですから軽いのも嬉しい特徴。ダイヤやルビーといった貴金属の華やかさはありませんが、品の良い落ち着きがあります。欅の他に黒檀などでも作られています。もちろん形もさまざま。ひとつとして同じものが無いというのも手作りならでは。
茶畑を見渡す工房にはギャラリーもあって、折々に陶器などの展覧会やコンサートも開かれています。ご自宅のリビングにはストーブが燃え、床は漆塗り。素敵な暮らしの中からこのブローチも生まれたのですね。