お正月に買った葉牡丹の茎が寒さの中でもひょろりと伸び、街路樹の蕾も心なしか膨らんだみたい。寒い寒いと思っているうちに一月も終わり、いよいよ二月。二月三日は節分で四日は立春を迎える。節分には各地での鬼追いの行事で鬼が逃げ回る。
子どもの頃、「鬼は外、福は内」の掛け声で豆を撒くのが楽しかった。この日だけは食べ物の豆を撒いても叱られないのですから。
鬼追いは追儺、または鬼儺(おにやらい)と呼ばれ、悪鬼を払い、災いを除く宮中行事でした。宿直(とのい)や警備を司る大舎人の中から特に背の高い人一人を選び、方相氏の役につけました。方相氏は黄金四目の面を被って鬼を追う役目を果たしました。廷臣一同は霊力のあるという桃の木で作った弓に葦の矢をつがえ、桃の枝で地面を打ちながら大声をあげたそうです。後にこの方相氏がその異様な姿から鬼に見立てられるようになったといいますから、皮肉なものですね。中国からこの行事が伝わったのは文武天皇(六九四〜七〇六)の頃。民間の間で鬼追いをするようになったのは近世になってからだそうです。
寺院での鬼追いは修二会と同じ迎春行事。国家安泰、五穀豊穣を祈ったのだとか。興福寺の鬼追いは比較的新しくで戦後二十一、二年のこと。空襲は受けなかったものの、町全体が疲弊していた時、何か元気が出ることをと始められたのだそうです。協力者の中には若い新聞記者もいたことから、今でも記者が一人鬼役として参加するそうですよ。
千年の続く行事がある傍らで、新しい行事も生まれているというのは、ちょっと素敵です。
鬼を払って、巻き寿司食べると立春です。日差しも明るく、長くなったのを実感するのもこの頃。こんな時、室内にたっぷりの花を飾って春を呼び込んでみてはいかがでしょう。取り立ててお客様を迎えるでもなかったとしても、自分のために思い切ってたくさんのお花への散財。玄関、リビングはもちろん、洗面台、階段などにも春の花。家中の花器を集めてあれこれ活けていると心が弾みます。
花に合わせてテーブルコーディネイトするのも楽しいものです。お花で贅沢した分、夕食は控えめにしましょうか。