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2007年9月 長月


 訳など必要のない歌です。朝顔というのは桔梗のことといわれています。どこにでも普通に見られる秋の七草は、人々の暮らしの中にも根付いてきました。どれも華やかではありませんが、風情に富む花で、籠の花器などに活けられているといかにも秋が来たという感じがします。
  万葉の時代、山上憶良が秋の七草の歌を詠んでから七種が決められ、以後折りに触れて七草が取り上げられるようになりました。春の七草が食べられるものであるのに対して、秋の七草は見るものですね。暑い夏を越して野山に咲く七草のひそやかさに待ちかねていた秋を重ねていたのでしょうか。
  今年の夏はことのほかに暑く、熱中症対策がニュースでも呼びかけられるほどでした。地球温暖化など関係の無かった昔でもやはり夏の暑さはずいぶんこたえたようで、徒然草の吉田兼好も家は夏向きに建てると言っています。冷房も冷蔵庫もない時代の夏を人々はどうやり過ごしていたのでしょうか。枕草子では氷室で冬に作った氷の話が出てきますが、貴重品だったに違いありません。暑い中に冷房を切り、汗が流れるに任せているとふとした風に涼を感じました。文明の利器は人間の感覚を鈍化させてしまう側面があるのかもしれませんね。時には自然の声にも耳を傾けてみたいものです。
  先日、日本環境教育協会理事の加藤辰巳先生のお話を伺いました。植物学がご専門の先生は1997年に環境庁の依頼で絶滅の危機にある植物のレッドリストと日本の植物の総目録にあたるグリーンリストを作成された方です。3年を要した調査で分かったのは、絶滅危惧種の多さだったそうです。全リストの3割にも及ぶのだそうです。お話の中に出てきたのが万葉集の歌でした。山上憶良にによって選定された七草のうち、万葉の人と同じものを見ることができるのは薄、葛、萩だけなのだそうです。河原撫子、桔梗、藤袴、女郎花は外国種にとって変わられているとか。もともとの日本原種はいずれもなよなよと華奢で花の数も少ないそうです。藤袴は刈って乾燥させ、お風呂に入れていたのだそうです。日本原産種は桜餅の匂いがしたといいます。現在、野原やお花屋さんで見かけるものにはそういった匂いはありません。種類が変わることで風習もなくなってしまったのですね。植物は生活や風習と結びついていますから、一つの種類がなくなると暮らしの記憶まで失われるのです。
  植物の絶滅はかつて、火山噴火など自然災害が主な原因でしたが、今はあきらかに人為的問題だそうです。貴重種の根こそぎ採取、伐採。レッドリストを作成すると貴重な品種だと“お墨付き”を与えてしまうことにもなってしまうと話されました。そして最も心配されるのが地球環境の変化だそうです。CO2増加による温暖化は、今大変危機的な状況だそうです。
  20世紀は世界戦争の世紀でしたが、21世紀はグローバルウォーの時代だというお話でした。地球がひとつになって温暖化やCO2問題と戦う時代だというのです。国家間で戦争をしている場合ではない、そんな時代を私たちは迎えてしまったのでしょう。地球環境などという大きすぎる問題の前で、一体個人に何ができるかと思ってしまいますが、どんなに小さなことでも、それが唯一解決への糸口につながるのだと力説されました。
  ゴミをなるだけ出さない、分別をきちんとする、公共交通機関を使う、地元でできるものを買うなどできることからはじめたいものです。美しくめぐる季節を守るためにできることを実行してみましょう。

  • 台風

 

メールにもちょっと時候のあいさつ

空が青く、薄い雲が流れていかにも秋。ついこの間までもくもくとした夏の雲だったのに。季節の変わる時って何かノスタルジックになってしまいます。子供の頃のことなど思い出して。

今年の夏は異常な暑さで、その後は台風続き、どうなっているのでしょうね。おだやかな秋になってほしいものです。

ガレージの隅に蝉の骸がころがっていました。何か無常な感じです。こんな時に詩人なら詩を作り、作曲家なら曲を作るのかしら。

朝夕涼しくなると、秋物のファッションに目が誘われます。季節の移り目ってほんと、困るのよね。

9月って何か慌しい月だと思いませんか。まだ暑いのに真夏のものを着たり、夏のバッグを持つと季節に乗り遅れた感じがするでしょう。そんな風に身の回りを片付けたり、お月見やお彼岸だと思っている間に過ぎてしまうのよね。秋の日はつるべ落としって言うけど9月もそんな感じがします。今年はそんな9月にならないように心を引き締めましょう。

彼岸花の咲く頃、葛城古道を歩きませんか。写真で見るととてもきれいだったので。歴史も少しは調べると面白そう。

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