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2007年8月 葉月

み佩(は)かしを 剣の池の蓮(はちす)葉(は)に溜まれる 水のゆくへなみ 我する時に逢ふべしと 逢ひたる君を な寝(い)ねそ 母聞こせども 我心 清(きよ)隅(すみ)の池の底 我は忘れじ 直(じき)に逢ふまでに (巻13-3289 不明)

 剣の池に茂る蓮の葉に溜まった水が、どこへいくのか分からないように私もどうなるのかしらと思っている時、「逢うべきですよ」と言ってくれた人がいます。その言葉に力を得て私はあなたに逢いました。でも母はあなたと「寝てはいけない」と言うのです。私は、清隅の池の底がじっと動かないでいるように、あなたのことを決して忘れないでいます。直接あなたに逢うことができる日まで。

8月、いよいよ夏真っ盛りの季節です。
今年の梅雨は空梅雨、夏は酷暑だという予報でしたが、さてどうでしょうか。地震の被災地ではせめて穏やかな気候であれかしと祈るばかりです。梅雨は意外にも長引き、台風の影響もあって随分雨の被害がありました。長い梅雨のせいで日照不足になり、野菜が値上がりしているようですし、稲の生育も心配されます。せめて8月は夏らしい夏になって欲しいものですね。そんな中で百日紅や槿、夾竹桃など夏の花は多少の気候変動にも拘らず、花を咲かせています。  夏の花といえばやはり代表格は蓮でしょうか。青磁の釉薬をたっぷりとかけたような豊かに広がる葉色。その中からくっきりと伸した茎からはまるで天衣のように薄く透けるように白や薄紅の花が咲きます。 原作国はインド亜大陸とその周辺といわれ、インドの国花でもあります。古代インドではヒンズー教の神話などで特徴的なシンボルとして登場するようです。「蓮華の目を持つ者」や蓮の上に坐す最高神のことなどが語られているとか。罪に迷わないのは蓮が泥の中から生え、気高く咲く様子があたかも神の世界と通じるからでしょう。そして、このことは仏教にも継承されていくのです。  万葉集に歌われた蓮は、仏教との関連は感じられませんね。蓮を歌った歌はこの他に3首あります。たとえば
「勝間田の池は我知る蓮(はちす)なし しか言ふ君が髭なきごとし」 (巻16-3826 不明)
意味は新田部皇子が勝間田池をご覧になって感動されたことをある女性に話すと“勝間田池のことは私も知っていますよ。蓮はありませんね、あなたのお顔に髭がないように“と戯れに詠んだ歌です。勝間田池がどの池なのかは特定できないようですが、新田部皇子の住居が西ノ京にあったことから、現在の大池あたりだったといわれています。  蓮は怜(恋)がかけられており、大輪の花と咲く美女のイメージが込められているようです。だとすると、勝間田の池というのは何か特定の場所を指し、そこにはあなたがおっしゃるような美しい人はおりませんよ。あなた様にお髭がないようにね。というちょっと皮肉めいた歌になります。古代の人々はユーモアのセンスに富んだ会話を楽しんでいたのではないでしょうか。

「蓮葉はかくこそあるもの 意吉麻呂が 家なるものは芋の葉にあらし」(巻16-3826 長忌寸意吉麻呂) この歌も表面的に見ると蓮の葉はこんな風に美しくなくてはね。私の家のなんか芋の葉のようなものですよ。ということになりますが、蓮を美しい女性だとすると断然違ってきます。当時、蓮は食べ物を盛るのにも用いられており、この歌も宴会の戯れ歌だといわれています。蓮はきっと招かれた家の女性、妻かもしれません。料理を褒め、されに盛ってある蓮にお宅の奥さんはきれいだね。妻っていうのはきれいでなくてはなあ、うらやましい。家のやつなんかまるで芋ですよ、芋。なんて、女性にとっては失礼千万なことだったかも知れませんね。  ついでですから蓮の歌、4首ともご紹介しましょうか。

「ひさかたの 雨も降らぬか 蓮葉に 溜まれる水の 玉に似た見む」(巻16-3837 不明) 雨でも久しぶりに降らないかな。蓮の葉に溜まった、きらめくような水の玉が見たいものだ。という裏にはさて、どんな気持ちが透けて見えますか。いろいろに想像してみてください。万葉集の楽しみの一つは好き勝手に読み替えができることではないでしょうか。幾時代にも亘って人々に読み継がれてきたのは、いかようにも解釈できる幅の広さがあったからだと思います。学者ではない者の強みを生かして楽しんでみましょう。

 蓮は“はちす”と呼ばれていたのが“はす”になったと言われています。“はちす”は蜂の巣。果実の入った花托が蜂の巣に似ているところからの呼び名です。この果実の皮が厚く、土の中で長期間、発芽能力を保存できるといわれています。昭和26年(1951)3月、千葉市検見川遺跡の地下から発見された蓮の種が大賀一郎博士によって発芽に成功しました。大賀蓮としてあまりに有名な古代蓮は2000年前のものでした。  奈良には蓮の名所が数々あります。まずは唐招提寺。ここには大賀蓮はもちろん中国から伝えられた孫文などの名花が夏の朝を彩ります。唐招提寺の蓮は夏の間、奈良国立博物館にも美しく咲きます。仏教美術の殿堂にふさわしい蓮は訪れる人々の目を楽しませてくれるのです。  行基ゆかりの喜光寺はすっかり蓮の寺として有名になりました。とりどりの蓮は極楽浄土さながら。薬師寺の玄奘三蔵院の前あたりにも蓮鉢が並んでいましたっけ。奈良町の名刹十輪院、油阪の西方寺もあわあわとした花が夢のように咲いて夏の暑さを忘れさせてくれます。春日大社の神苑には万葉にちなむ花が植えられ、蓮ももちろん咲いています。  夏、早起きして蓮の花めぐりに出かけてみましょうか。

  • 海水浴
  • 浴衣
  • 昼寝

メールにもちょっと時候のあいさつ

だまって座っているだけでも消耗する暑さです。エアコンをかけるとその時はいいのだけれど、一日中その中にいると体がだるくなってしまいます。 一度入れると切れば暑くてまた入れてしまうので、今日はノーエアコンデーにしました。

海水浴には行きたいけれど、日焼けが怖い。というわけで夜の海水浴ができるところを探すことにしました。でもね、ちょっと感じが違うかもね。帰ったら報告します。

外を歩いてすっかり暑くなって、汗もたっぷり。こうなったら、カキ氷を!とお店に入って注文したはいいけれど、できた頃には暑さもおさまり、食べている最中には寒くなってしまいました。でも根性で食べてしまったけど、ふるえあがりました。だって店内はがんがんにクーラーが効いていましたから。急いで外へ出て暖まりましたが、ほどなく回復。こんなことしていては体に悪いよね。

朝から降るような蝉時雨。今日も暑くなりそうです。

百日紅が太陽に向かって咲いています。向日葵、夾竹桃と同じでよほど太陽が好きなんですね。

先日高野山へ行ったら、山はすっかり蜩が鳴いて、秋が間近でした。帰ってきたらまだまだ油蝉。いましばらくはこの暑さを楽しみましょう。

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