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 東の野に朝一番に立つかぎろいが見え、振り返ると月は西の方に傾いている

 あまりに有名なこの歌は、冬の早朝にだけ見えるというかぎろいがどのようなものであるのかと多くの人々のロマンをかき立ててきました。夜明け前の雄大な風景を歌ったともいわれますが、事実は趣を変えるようです。
  まず、阿騎野は平野ではなく、山と山の間にある起伏に富んだ丘陵で雄大とか壮大な風景ではないのです。東に夜明け、西に月という単純な歌ではないのかも知れません。
  この歌は持統天皇6年(692)11月16日に皇孫である軽皇子が亡き父草壁皇子追悼の狩猟のために出かけてきた阿騎野での歌だといわれています。深々と冷え込む冬の夜明け、思い出の山野に夜明けを待ちながらため息のような歌だと故犬養孝さんは書いていらっしゃいます。東の曙光が見え始め、西の音羽山に月が傾くのは陰暦11月17日しかないようです。18日になると月は音羽山の中天にあるとか。
  阿騎野は奈良盆地と吉野、さらに伊勢を結ぶ交通の要衝として古くから栄えた地。飛鳥時代、大和朝廷は御狩場の一つをここに置きました。初夏5月には皇族たちがここで薬猟(くすりがり)を楽しんだようです。薬猟とは鹿の生えたばかりの若い角をとる狩です。若い角は鹿(ろく)茸(じょう)と呼ばれる漢方薬。滋養強壮剤として珍重されたとか。薬猟が薬草採りになるのはもっと時代が下ってからのこと。「日本書紀」には菟田野での薬猟のことが記されていますが、参加者は冠位と同じ色の服を着ていたようです。華やかな行事としての薬猟の様子が目に浮かびます。
朱雀元年(672)、吉野に隠棲していた大海人皇子が壬申の乱を決意して挙兵し、最初に立ち寄った地でもあります。大海人皇子に従った持統天皇(当時は鵜野讃(うののさら)良(らの)皇女(ひめみこ))やその子草壁皇子にとって阿騎野は思い出深い土地として記憶されていたに違いありません。
歌が作られた時、宮廷歌人の人麻呂も同行しています。陰暦11月17日は太陽暦で12月の末から1月初めの頃。ちなみに今年は12月26日です。当時、その季節は随分寒く、雪さえ降っていました。こんな寒い時期に本当に狩をしたのでしょうか。しかも、狩猟を統べるのは弱冠10歳の軽皇子。父草壁皇子は28歳で亡くなっているし、軽皇子も15歳で即位して文武天皇となるが、わずか10年の在位で亡くなっています。父子とも頑丈な体質ではなかったようです。そんな少年を伴っての阿騎野行き、本当の目的は何だったのでしょうか。
宇陀市大宇陀区にある公民館には故中山正實画伯による壁画が飾られています。人麻呂の歌に想を得た絵は、綿密な考証がされました。
1、狩の場は大宇陀区にある阿紀神社付近。
2、人麻呂が朝空の“かぎろひ”を見たのは阿紀神社前の小高い丘である現在の“かぎろひの丘”の上。
3、背景は秋山城跡の南麓あたりで見える風景とし、左肩には高見山が遠望できる。
4、日時は東京天文台の協力を得て陰暦11月17日午前6時頃。
5、馬の大きさは関保之助博士の指導を得る。
  こういった考証をした上で描かれた絵は、当時の様子をありありと伝えてくれます。
  宇陀市では陰暦11月17日にあたる日に万葉公園で「かぎろひを観る会」を開き、焚き火を囲みながら人々がかぎろひを待ちます。
  “かぎろひ”とは、「厳冬のよく晴れた早朝、太陽が水平線上に現れる約1時間前に太陽光線のスペクトルにより現れる最初の陽光」といわれます。2度、かぎろひを見ようと訪れましたが、見えたのは朝焼け。これではないかと思いましたが、地元の方々によるとこんなものではない、とのこと。その素晴らしさを聞くにつけ、もう一度行きたいと思いが募ります。しっかり着こんで、いきましたが、早朝の冷え込みは足元から這い上がってきました。ふるまいの芋汁の嬉しかったこと。
  さて、今年は見えるでしょうか。

メールにもちょっと時候のあいさつ

11月になったら、おめかしした子供たちが目につきます。羽織に袴、蝶ネクタイ、振り袖やふわふわのスカート。15日は七五三なんですよね。

正倉院展が始まりました。朝から行列ができていました。紅葉狩りと展覧会なんて、秋の奈良ならではです。

自然は絵のように、絵は自然そのもののように見える時美しいって言ったのはデカルトだったかしら?紅葉が夕日に照らされているのを見て、なるほどなあって感心しています。

炬燵や鍋物が恋しい季節ですね。暖かいのがご馳走。はや、そんな季節になりました。

ベランダに出していた鉢植えを部屋に入れ、炬燵も出して、冬仕度も準備完了。

ペット用品へ立ち寄ったら、かわいい犬のフリース服。思わず手に取ってしまいました。ペットもいないのに!

この頃、夕食メニューに鍋料理が多くなりました。何たって暖まりますよね。

秋の味覚といえばやっぱり松茸…。でもめったには食べられません。というわけで栗ご飯に焼き芋で秋を満喫しています。

ついこの間まで暑いって言っていたと思うのにもう寒いだもんね。紅葉狩りなんてしてる間に年賀状のシーズンですね。一年がだんだん早くなる気がします。

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